相続税

相続税

 

相続税とは、亡くなった人(被相続人)が、生前有していた財産を、相続や遺言による「遺贈」により、取得した時に課せられる税金です。

相続で取得した者を「法定相続人」、遺言によって遺産に遺贈を受けたものを「受遺者」呼び、これらの者が、相続税の納税義務を負います。

相続税に関する事柄は、複雑で難解な部分も多いので、納税者自身が相続税の基本事項を理解することと同時に、相続税の納付を円滑・有利に行うには、相続税に精通する専門家のアドバイスは欠かせません。

 

相続税の計算手順

 

1.相続税を算出するには、まず、被相続人の残した相続財産の総額を算出することが必要です。

現金や預貯金、不動産、有価証券、ゴルフ会員権、書画骨董・美術品等の財産的価値のある被相続人の全て財産を集計してします。

その後、この総額から被相続人の借り入れ金やローン等の負債や葬儀費用等の税金控除の対象となる費用を控除して、被相続人の遺産の正味価額を算出します。

この遺産総額が、税法上認められている基礎控除額に満たない場合は、相続税は課せられず、申告の必要はありません。

遺産総額が、基礎控除額を超えていた場合は、相続税の算定を行い、納期までに、納税すべき金額を納める必要が生じます。

2.相続税の総額の計算

相続税の総額の算出は、まず、法定相続人各人が、法定相続分通りに相続財産を取得したとみなして算出します。

相続財産の分割に際しては、相続人全員の同意に基づく遺産分割協議が優先されますが、遺産分割の方法によっては、相続税の額が変動することもよくあり、相続税対策を目的とする不当な遺産分割協議が行われる可能性も否定できないので、まず、法定相続分に従った相続分を算出し、その際の相続税を計算します。

3.相続税の総額を算出し、各相続人が取得した実際の相続財産の割合に応じて、相続税を負担します。

相続財産は、現金や預貯金等の分割可能な「可分債券」ばかりではなく、不動産や日々刻々と値が変化する株式等の財産もあります。

そこで、これらの遺産の価値を正確には把握し、税法上問題が生じることなく、相続税を計算するには、非常に高い専門知識が必要です。

税額の計算は、税理士の業務ですし、不動産の評価は、不動産鑑定士がその専門家です。

この他、相続税の規定には、様々な特例や国税庁の通達もあるので、基礎控除を超える方はもちろん、自分は基礎控除内の相続なので、相続税の納付義務はないとお考えの方も、相続税に関しては、専門家と相談してその知恵と経験、専門知識を借りることが賢明な選択と言えます。

 

相続税とみなし相続財産

 

「みなし相続財産」とは、相続税の納付手続き上、被相続人の本来の財産ではないのも関わらず、相続財産に算入され、課税対象となる財産です。

本来、被相続人の死亡を原因として相続人に支払われる生命保険金や死亡退職金は、被相続人が生前有していた財産ではないので相続財産とは言えません。民法上の相続財産には入らず、「遺産分割協議」の対象から除外されますが、生命保険金や死亡退職金は、「みなし相続財産」として相続税の対象となる場合があるのでので注意して下さい。

1.被相続人が亡くなる前の3年間に贈与した財産は、「みなし相続財産」に該当します。

このみなし財産の規定は、被相続人が自分がの死んだ時のことを考えて、贈与することでより多くの遺産を相続人に残そうとする、被相続人の相続税載節税行為を防止するための制度です。

被相続人が死亡する前3年間に贈与した財産は、みなし相続財産とされ、相続財産に算入され、相続税の課税対象になります。

2.生命保険金

被相続人が生命保険の保険料の支払いを行い、保険金の受取人である場合は当然ながら、被相続人の死亡で支払われる保険金は、被相続財産と考えられるので、被相続人の通常の相続財産に算入して相続税の対象になります。

また、被相続人がその死を考えて、生命保険の受取人を相続人変更して相続税の節税を目論むことも考えられます。このような相続税の節税行為を防ぐために、相続税に関し原則として、保険料を被相続人が支払っていた場合の生命保険金は、被相続人の「みなし相続財産」として相続税の課税対象としています。

この結論は、生命保険金の受取人が誰であっても変わりません。

ただ、生命保険金の相続では、非課税限度額が設定されていて、500万円×法定相続人の数で算出する額までは、非課税になります。

2.死亡退職金

死亡退職金とは、被相続人の死亡により、被相続人に支給されるはずであった退職金や功労金等の給与に準ずるお金のことを言います。

死亡退職金は、被相続人の死から3年以内に支給が確定したものは、「みなし相続財産」とされ、相続税の課税対象に算入されます。

ただ、相続人が受け取った、死亡退職金の全額が相続税の対象になるのではなく、500万円×法定相続人の数で算出する非課税限度額までは課税されません。

尚、相続人以外が受け取った死亡退職金には、非課税限度額の適用はありません。

3.弔慰金

被相続人が亡くなった方際に受ける弔慰金やお花代等は、原則として相続税の対象にはなりません。これらを相続税の対象とすることは、国民感情に反すると考えられているからです。ただ、被相続人が勤めていた会社等から受け取った金員等が、実質的に退職慰労金と認められる場合は、相続税の対象になります。

 

相続税の税率

 

現行の相続率は、以下のようになっていますが、相続税が改正され、

課税標準

税率

控除額

1000万円以下

10%

              ー

3000万円以下

15%

50万円

5000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

3億円以下

   40%

1700万円

3億円超

50%

4700万円

2015年1月1日以降は、

課税標準 税率 控除額

1,000万円以下

10%

-

1,000万円超~3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超~5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超~1億円以下

30%

700万円

1億円超~2億円以下

40%

1,700万円

2億円超~3億円以下

45%

2,700万円

3億円超~6億円以下

50%

4,200万円

6億円超~

55%

7,200万円

になります。

 

納税額の減額

 

1.配偶者の特例

被相続人の配偶者は、課税価格合計額×配偶者の法定相続分と1億6000万円を比較して、いずれか多い金額まで、相続税が課せられません。

ただ、この結果、配偶者の相続税がたとえ0円であっても、相続税の申告書は提出する必要があるので注意して下さい。

また、遺産分割協議が遅れ、申告期限までに相続財産が確定しない場合は、一旦法定相続分の申告書を提出し相続税をおさめ、申告期限から3年以内に相続分が確定したら、配偶者特例を請求して、相続税を返還請求できます。

2.未成年控除

現行の未成年控除は、20歳まで1年につき6万円ですが、2015年からは、20歳まで、1年につき10万円に引き上げられます。

3.障害者控除

現行の障害者控除は、85歳まで1年につき6万円(特別障害の場合は、12万円)ですが、2015年からは、85歳まで1年につき10万円(特別障害者の場合は、20万円)に引き上げられます。

3.相次相続控除

被相続人の死亡前10年以内に開始した相続で、今回相続を受けた相続人が財産を取得し相続税を納めている場合は、その相続税のうちの一定額を今回の納税額から控除する規定があります。

4.外国税控除

相続により外国にある財産を取得した者で、外国の相続税等が課せられた場合は、その税額を日本の相続税から控除できます。

 

相続税の申告

 

相続税の申告は、「相続を知った日(被相続人が亡くなったことを知った日で、通常は、被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内に被相続人の住所地を管轄する税務署に申告書を提出し、納税することが義務付けられています。

万一、これに反すれば、加算税や滞納税が課されることがあります。

ただ、必ずしも遺産分割協議がスムーズに進行するとも限らず、遺産分割協議が相続税申告・納付期日に間に合わない場合もあります。

間に合わない場合は、とりあえず、未分割状態の相続財産の法定相続分を相続したとして、申告・納税を完了します。

その後、遺産分割協議がまとまり相続財産が確定し、その時が相続税申告期限から3年以内であれば、相続税の払い過ぎがある場合は、「相続税の更生」をして、返還してもらう事ができます。

ただ、確定した納税金額が納税した金額より少なかった場合は、「相続税の修正申告」を行い、足らない分を追加して納税する義務があります。

 

相続税の延納

 

相続税の納付は、納付期限までに現金で1回で納付することが原則ですが、ただ、現金で1回に納付することが困難な場合は、一定の要件を満たせば、延納(相続税を分割納付する方法)することが出来ます。

延納の適用要件は、

①納付額が10万円を超えていること。

②相続税の納付期限までに、現金で一時に納税することが困難であること。

③担保を供与すること(但し、延納金額が50万円未満で、かつ、延納期間が3年以下の場合は不要)

④延納期限までに、延納申請書を提出すること。

の以上4つです。

尚、延納は相続税の分割払いなので、利子相当額の利子税が加算されます。

 

相続税の物納

 

相続税を延のうによっても現金で納付できない場合は、一定の条件下で、「物納」することが認められています。

物納の要件は、

①相続税を納付期限までに現金一時納付または延納によっても現金で納付することが困難である場合。

②納付期限までに、物納申請書を提出し、それと同時に、物納の対象物が不動産であれば、登記事項証明書や測量図、協会確認書等を提出すること。

の以上2つです。

物納出来るものには順位があり、第1順位が国債や地方債、不動産、船舶、第2順位が株式、公社債、投資信託等の有価証券、貸付信託等の受益証券、第3順位が動産です。