相続税と税理士

1.相続税と税理士

 

相続に関連する最も重要で複雑なことは、相続税の問題と言えます。相続税の問題は、被相続人の遺産の評価はもちろんのこと、様々な税制や特例措置にも精通していなければ、相続人が満足し、有利な相続税納付は実現しません。

ただ、相続税に関する優秀な税理士等の専門家は意外と少ないのが現状なので、相続税の問題に的確に対処できる専門家の選定は重要です。

所得税などとは違い、相続税は、相続税に算出において税額が大きく異なることがよくあります。相続税の金額は様々な要素が複雑に絡み合うので、相続に十分な経験と知恵がある税理士と経験の少ない税理士では、節税を含めた業務の満足度に差があるのです。

 

実務経験と優れた技量を持つ税理士に依頼

 

「相続税と税理士」でインターネット検索すると、おびただしい数の「相続が専門・詳しい」と謳う税理士や税理士事務所がヒットします。

ただ、インターネット上で洗練されたページを公開している税理士が、必ずしも相続税に精通しているとは限りません。

これは、弁護士や行政書士、司法書士等のいわゆる「士業」の方にも言えることですが、各税理士は、同じ科目の国家試験を経て税理士資格を得ていても、その後経験した業務や勤めた税理士事務所の業務内容で、専門分野は大きく異なります。

特に、相続税の業務では、その発生頻度が他の税務処理に比較して頻度が少なく、また、様々な要素が複雑に絡み合っているので非常に難しい仕事なのです。

その結果、相続専門と言う税理士でも、相続税に実務経験の多さや技量によっても大きな差異(相続税の納税額の差)が生じることが良くあります。

相続税に関してまず考慮すべきは、税理士の選定です。税理士選定の重要性をよく考えて、相続税の問題を納得行く形で迅速に進めることが重要です。

 

相続税の問題を相続税に強い税理士の相談した方が良い方とは

 

相続税の問題は、相続税法上に関連する事柄に限らず、民法や建築基準法等の不動産関連法規等の影響を受けるため、相続に強い税理士を探す必要がありますが、特に、どのような方が、相続税の相談を税理士にした方が良いのでしょうか。ここでは、相続税の相談を税理士に行う必要性の高い方を列挙してみます。

1.相続財産に土地等の不動産が多い方。

2.相続税が自分にどれ位課せられるのかシミュレーションしたい方。

3.相続税に課税額を節税したい方。

4.相続税の納税資金をどうのうに確保するかのアドバイスを受けたい方。

5.専門家の遺産分割の実務経験を聞き、自分の遺産分割での「争続」のリスクを回避したい方。

6.被相続人が事業主又は農業従事者で、その後の事業資産として被相続人の相続財産を細かく分割したくない方。等を挙げることができます。

相続税の納付期限は、相続開始を知った翌日から僅か10か月です。10か月間は長いと思うかもしれませんが、実際に相続が始まってしまえば、あっという間の10か月です。相続税の問題は非常に複雑で、相続人の利害も関わるので、事前に相続に精通した税理士等に相談しておくことをお薦めします。

 

相続に精通した税理士を見分ける基準とは

①相続税の申告代理実績は十分か

高齢化社会を反映して、相続に関心を持つ方が増加しています。その結果、税理士等の専門家と言われる方も、そのニーズを取り込もうとする方が増加しています。

ただ、税理士等のこれらの専門家を選定するには、相談実績ではなく、実際の相続税の申告実績、つまり、真の実務経験を重視すべきです。

インタータネット上には、相談実績が何年であるとか相談実績が多数であるとか、自己宣伝情報が多く掲載されていますが、本来頼りになる税理士は、税理士の相続税申告の実績であり、その実績に依頼者である相続人が満足していることなのです。

税理士の相続税申告の経験やその実績について真価を問うには、様々な質問をすることが必要なのですが、依頼する相続人に相続税の基礎的な知識がなければ、税理士の真贋を判断する質問はできません。

相続税の支払いや税理士への依頼・手続き費用を支払うのは相続人自身なので、十分相続税に関する知識と理解を深めたうえで、その先を行く税理士等の知恵と経験を活用すべきです。

②土地建物等の不動産評価について尋ねる

日本における相続財産の課税対象は、バブルが崩壊して久しいと言っても、依然として土地等の不動産です。

そこで、相続税の問題を税理士に相談する場合は、土地の評価方法について専門的な理解を尋ねてみることが重要です。土地の評価は、登記法や特殊な地図や路線図、または、現状における取引価格等を総合して判断して算出する必要があります。土地の相続税評価額は、表面的な知識と理解では通用しない深い世界です。この評価額を相続人の立場や現状に基づいて行える税理士が本物の相続税に精通する税理士と言えます。

不動産評価が正確に出来ることが、税理士選定の試金石になります。この試金石をクリアしている税理士が、合法的で相続人に有益な節税感覚を有する税理士と言えるのです。

相続税の算定基準になる相続財産である土地等の不動産の評価は、たとえどんなに優れた教科書を理解しても太刀打ちできません。現実に業務をこなした活きた経験こそがものを言うのです。

優秀な税理士は、経験からこの書籍や他の情報から決してえられない自分個人のノウハウを有しています。相続人がこのような税理士に巡りあえてこそ、納得行く相続税の支払いが行えるのです。

③その税理士は事業成功者か

相続税の相談は、その業務に成功している税理士に相談しなければなりません。

成功者であっても、業務が軌道に乗るまでは、人知れない努力と失敗を積み重ねた上で成功への秘訣を掴んでいます。

机上の空論ではなく、積み重ねた経験に基づく知恵が、相続税の問題に悩む相続人の問題を解決するものと思います。

経験に裏付けられた独自のアドバイスを自信を持って指南出来る税理士を選ぶべきです。税理士等のいわゆる「士業」の仕事の依頼は、依頼者からの紹介で業務が発注されることがとても多いのです。

④各種の法律や税務調査に精通しているか

相続税の問題は、ただ単に、相続税法を知りこれを元に相続税額を計算して納税者を代理して税務署に申告すれば済むといった単純な業務ではありません。

相続に関する基本法は、民法の家族法の中の相続法であり、土地や建物に関しては建築基準法、また、税務署が行う相続税特有の税務調査の実施も考えられるので、この対処のポイントも知っている必要があります。

この他法令や財務省通達の他、預金や金融商品の解約や名義変、更に、相続に必要な専門的な手続きの概要を十分説明して相続人を安心させることができるかといった、実務的な経験と能力も相続税に関する税理士選定の重要な選定基準となります。

 

税理士にも専門分野がある

税理士をはじめあらゆる「士業」と呼ばれる方々は、各専門分野を持っています。これは、医者に関して言うと外科や内科、またその中でも細分化された様々な専門科目があるのと同様です。相続税は片手間に出来るような簡単な業務ではないので、より一層、税理士の能力差が出てしまいます。

また、税理士と依頼者の相性も重要です。相性がよいと自分の言う思いを理解してくれ、信頼感が生まれます。これは意外と重要なことです。

所得税や法人税の場合は、比較的度の税理士に依頼しても、その税額に大差はないと言えますが、先述の通り、相続税はこれらの税金の算出より複雑で、特例の選定や遺産の評価額が異なるので、税理士の違いで大きな納税額の違いに繋がることもあるのです。