土地の相続税

12.土地の相続税

 

相続税とは、亡くなった親族等の被相続人が残した遺産を相続人が承継した際や、遺贈によって財産を贈与された受遺者に課せられる税金(国税)です。

土地は、相続財産に対する割合が最も高い財産ですが、現金や預金等の財産と異なり、分割が難しい資産です。土地は1筆(ひつ)2筆と数え、土地を分割するには、「分筆の登記」が必要です。

また、土地の相続税課税評価価額を算出するには、その基礎なる土地の評価額を算定する必要があります。相続税の計算には、この評価基準の知識も必要です。

大切な遺産である土地を守るためにも、相続税に対する基礎的な知識は付けておく必要があります。

 

土地の価額は1物4価

 

現在の日本で相続対象となる財産の多くは、土地・建物等の不動産です。ただ、一般の方が知識や経験がないままこの土地価格を算出することは困難なことと言えます。

土地の価格と一口に言っても、その実態は、①「実勢価格」(実際の売買取引で成立する市場価格)、②「公示価格」(国土交通省が発表する毎年1月1日時点における全国各地点の標準値の土地価格。実勢価格を1とした場合の評価割合は90%)、③「路線価」(国税庁が発表する毎年1月1日時点における全国の土地価格で、相続税や贈与税の課税評価額の基準になる価格。実勢価格を1とした場合の評価割合は70%~80%)、④「固定資産税評価額」(市区町村が算定する3年毎の1月1日時点における不動産価額。固定資産税や不動産取得税の算定基準になる価格で、実勢価格を1とした場合の評価割合は、60%~70%)の4つがあります。

このうち、相続税や贈与税の計算には、原則として「路線価による評価額」を用い、路線価が付されていない地域では、「固定資産税評価額」に「倍率方式」と言う土地評価方法を加味して評価額を算出します。

 

相続によって取得した土地の評価価額は、国税庁の「財産評価基本通達」に従う

 

相続税や贈与税の計算には、原則として「路線価による評価額」を用い、路線価が振られていない地域では、「固定資産税評価額」に「倍率方式」と言う土地評価方法を加味して評価額を算出しますが、その実務的・具体的評価額は、国税庁の「財産評価基本通達」に従って評価します。

何故なら、相続税に関する土地評価方法に共通する原則や各種評価方法を具体的に明示し統一することで、相続税評価価額に対する公平を期するためです。

この趣旨を実現するため、通常の相場価格と評価額が異なる場合もあります。相場価格を基準に分割する遺産分割協議と異なる注意が必要です。

土地評価算出の基準となる「路線価」は国税庁のホームページからアクセス可能ですが、この情報を読み解くにはかなり専門的知識と経験も要するので、土地の相続税の申告の際には、相続や相続税に精通した(特に不動産関連に強い専門家)専門家に税務処理を依頼することが必要です。

 

路線価による土地価格評価

 

土地に関する相続税額は、路線価による評価方法を使用します。

路線価は、主に市街地的な形態を形成する地域で採用される土地評価で、毎年国税庁が作成する「路線価」図に基付き算定します。

路線価は、土地が面する道路に付された土地の1㎡あたりの価格(路線価)に当該土地の地積(土地面積)を乗じて算出します。

ただ、これは評価の基本であり、実際ではこの値を補正率で修正します。何故なら、土地は2つとして全く同一の形状のものはなく、例え全く同じ面積であっても、土地の奥行きや道路に面する間口、地形等の要素を加味して評価する必要があるからです。

当然ですが、隣接する土地で同じ面積でも、利用しにくい土地は評価額は下がります。

また都市計画法で定めた用途地域で、大きな評価額の差が生じることもあります。

一方、2つの道路に面する角地等は、土地の付加価値が高いとされ対愛評価に繋がるのが一般的です。国税庁路線図を参照したい方は、http://www.rosenka.nta.go.jp/

 

倍率方式による土地価額評価

 

土地の相続税価額評価の算定は、前述の路線価価格を基礎として算出することが基本ですが、この路線価が付されていない地域があります。都市郊外の地域で、「路線価」が定められていない地域です。

それらの地域の土地評価は、「固定資産税評価額」にその土地が属する地域の倍率を乗じて評価額を算出します。

「固定資産税評価額」は、毎年市町村役場から土地建物基本台帳の掲載情報に基づき各所有者に送付される「固定資産税の課税明細書」掲載されているので、この情報を元に相続税の算出を行います。評価倍率表も国税庁のホームページからアクセスできます。

http://www.rosenka.nta.go.jp/

 

農地の評価

 

田や畑のといった農地の評価単位は、一般の土地と異なり、1枚(耕作している1区画ごと)に評価します。

農地の評価は、①純農地、②中間農地、③市街地周辺農地、④市街地農地の4つの区分に従い、①,②の農地では、倍率方式により、③は、宅地比準方式または倍率方式で、市街地農地の評価額に80%を乗じて算出します。④は、その農地が宅地であるとした場合の価額から農地に転用するために必要な造成費と控除して評価します。

計算式は、(1㎡あたり当該農地が宅地である場合の価額-1㎡あたりの造成費)×面積です。

ただ、倍率方式で算出する地域もあるので注意が必要です。農地に関しては、農地法等の特殊な法律が絡むことがあるので、これらの法律に詳しい専門家のアドバイスを受けることが必要と言えます。

 

小規模宅地の評価減の特例

 

2015年1月1日から相続税の基礎控除額が4割カットになり、現行の基礎控除額の5000万円+1000万円×法定相続人の数が、3000万円+600万円×法定相続人の数に改正されるのに伴い、東京をはじめとする大都市近郊の住宅地を相続する場合は、住居用であっても相続税の課税対象者は大幅に増加することが試算されています。

そこで、小規模宅地の評価減の特例が大きな関心を集めています。

小規模宅地の評価減の特例は、相続や遺贈によって取得した財産で、被相続人と生計を一にするものが居住用や事業等に供されている宅地等を持つものが適用対象で、この宅地等の評価を通常の50%~80%が減額され、相続税の課税対象価額とする制度です。

この制度は、税制改革に伴って、居住用の土地面積が従来の240㎡から330㎡に拡大されます。

一般的な相続財産の内容は、土地等の居住用不動産が大きな割合を占めることから、相続人は、小規模宅地等の評価減の特例についての知識を備えることが重要です。

詳しくは、国税庁http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4124.htm

他人に貸している土地は評価が減少

 

他人に土地を貸している場合は、その土地を所有者が自由に使用できないので評価額が減少します。相続税の計算では、当該土地の本来の評価額から借地権の価格を控除して計算します。

具体的には、国税庁の路線図を見ると、各路線価の横に「B」や「C」といったアルファベットが付されており、このアルファベットが借地権割合を示しています。

例えば、「C」が付された土地なら借地権割合は60%なので、土地の評価額は、「路線価」×(100%-60%)の式で算出します。

路線価も国税庁のホームページから確認できます。

http://www.nta.go.jp/hp-tsukaikata/15.htm

また、貸家建付地としての評価減制度もあります。この制度は、相続する土地のうち、賃貸として利用している部分については、「貸家建付地」として2割程度の評価減を受けるものです。

更に、家屋の賃貸部分の評価額は、居住用家屋の評価額と比較して、3割程度減額されることも押さえておく必要があります。

 

相続税改正に備え、相続税対策は不可欠

 

国税庁が発表しているデータ(相続財産の金額の構成比の推移)では、課税対象になった財産のうち、土地が最も多く5割ほどに達しています。また、相続税の基礎控除額40%カット制度が施行されれば、これまで相続税の課税対象とされていなかった相続にもその範囲を広げることに繋がり、土地の相続財産に対する割合が更に増加することが考えられます。

特に大都市近郊の住宅地等を相続される方は、今の内から相続について十分知識を得て、対策を考えておくべきです。

土地の相続は、煩雑な手続きを伴うので、生前から相続対策、節税対策を十分対処しておくことが重要です。