相続相談

10.相続相談

 

相続問題が生じた場合、私たち一般人は、相続や相続税に関する知識や経験が乏しいため、相続問題に詳しい専門家に相続相談を依頼することを考えるのではないでしょうか。

この時、弁護士や司法書士、行政書士、税理士等の専門家が思い浮かびますが、これらの専門家ならだれでも満足する回答が得たれるとは限りません、

各専門家はその士業ならではの専門分野があり、例えば法律の専門家でも、相続に詳しい者とそうでもない専門家がいます。

相続相談を行うには、これら士業特性と各士業の方の業務内容を十分に検討する必要があります。

そこで、このページでは、専門家に対する相続相談を行う上での基礎的な検討材料を提供したいと思います。

 

弁護士と相続相談

 

弁護士は、法律問題のスペシャリストであり、様々な争いごとや複雑な法律問題の相談にも対処することができます。

ただ、弁護士と一口に言っても、その専門分野大きく異なることがあるので、弁護士に相続相談を依頼する場合は、出来る限り相続について多くの経験を持った方を選ぶべきです。知人からの紹介等により、相続問題について確かな腕を持ち、人柄等にも信頼できる弁護士を選定すべきです。

また、相続相談は、相続人の正直な気持ちを伝える必要があるので、弁護士と依頼人の信頼関係が重要になります。依頼者は、弁護士の判断に基準となる書類や証拠をすべて提示し、素人判断を下すことなく全ての疑問をぶつけることが重要です。

面識のない弁護士の事務所へ飛び込んで、相続相談を行う依頼人の方もいますが、紹介者のない相続相談の依頼に難色を示す弁護士もいます。

何故なら、弁護士も人間であり、依頼者の素性や人柄が分からないと、思わぬ難題に引き込まれるリスクを考えてしまうからです。

 

相続相談を弁護士に依頼するメリット

 

相続は時に、非常のこじれる場合があり、他の相続人が弁護士をつけることがあります。法的な問題は、例え本やインターネットでにわか勉強しても、弁護士のような法律の専門家に素人は勝てません。このような場合は、相続問題の解決に十分な手腕を持つ弁護士に相続相談を持ちかけるべきです。

また、遺産分割で生じた疑問や遺言の内容、また、遺産分割協議の合意が得られそうにない時も弁護士に相談するとようでしょう。

相続や遺産分割に豊富な経験と知識を有する弁護士は、様々な法令の他、裁判所の裁判例も知識にも精通しているので、冷静で客観的に相続問題を満足いく形で解決してくれます。

更に、他の相続人が被相続人の遺産を抱え込み、遺産分割協議に応じない相続人がいる場合も、弁護士に相談すべきです。

被相続人の遺産形成のために尽力し、当該遺産に対して「寄与分」が認められるにもかかわらず、他の相続人が法定相続分のみしか認めようとしない場合は、弁護士に相続相談を依頼し、正当な財産寄与分を獲得すべきです。

この他、弁護士は、他の法律関連の国家資格者の中で最も法律問題に詳しく、その権限も他に比べオールマイティとも言える存在です。訴訟代理権も有しているので、信頼のおける弁護士に対する相続相談は最も効果的であると言えます。

訴訟を見据えた相続問題の解決は、あまりお薦めはできませんが、他の相続人に対して戦略的な圧力をかけ、話し合いに応じない他の相続人を協議の場につかせる間接的な効果があります。

 

弁護士への相続相談で気になること

 

通常、弁護士へ様々な問題の解決を依頼した場合、他の士業でも有効なアドバイスが出来る事柄についてであっても、その相談料や問題解決への依頼費用が高いとされています。

ただ、確かに現在でも費用は他の士業に比較して高額とも言えますが、相談費用や依頼費用は、各弁護士事務所によって大きく異なります。

また、初回の相続相談については、1時間程度なら無料としたり、実際に相続問題の解決へ向けた実務作業を始める際に生じる「着手金」も、最近ではかなり低く抑える弁護士事務所もあるので、ネット検索や評判、相続問題について弁護士を活用した方の紹介等から、自分に最も適応する信頼感の有る弁護士に相続問題を相談する必要があります。

 

司法書士への相続相談

 

司法書士は、現在、債務問題の過払い金返済等の業務の宣伝活動が目立っていますが、本来の業務は、不動産登記や会社登記の専門家です。

この点では、司法書士の排他的専門分野も法律上規定され、不動産の相続問題に欠かせない登記に関する十分な経験と知識を持つ司法書士が多く存在します。

相続によって、不動産の所有権を取得する際には、当該不動産の名義変更等の法務局における煩雑な手続きを行う必要(義務でなく、登記変更手続きを行わなくても罰職等はありませんが、相続による登記変更をしていないと将来に不測の事態を引き起こす危険が高まります。)がありますが、これに迅速に対応してくれるのが司法書士です。

また、従来、裁判所への訴訟代理人は、弁護士の専権事項でしたが、法律の改正で、訴訟額の低い簡易裁判所への訴訟に対しては、司法書士会連合会の研修を終えて認定を受けた「認定司法書士」も訴訟代理行為ができるようになっています。

更に、司法書士は、裁判所へ提出する各種書類の作成業務や遺産分割協議が不調に終わり、裁判所へ調停を申請する場合においても、知識と経験を豊富に有する者も多いので、

まず、司法書士に相続相談を持ちかけてみるのもお薦めです。

 

どのような場合に司法書士に相続相談すべきか

 

先述のように、司法書士は土地・建物等の不動産登記の専門家なので、相続を原因とする不動産登記変更の際には、司法書士に相談して下さい。

また、相続問題の解決や遺産分割協議が有効になるには、全ての相続人の合意が必要なので、相続人の確認作業を欠くことは出来きません。この相続人の確定業務を相談する場合にも司法書士を活用して下さい。

更に、弁護士業務とも共通しますが、相続財産の中にマイナスの遺産があり、積極財産の範囲内で遺産相続を行う「限定承認」を考えている方も、相談に乗って貰う事ができます。「限定承認」は、1人で申請することが出来ず、相続人全員で行う必要があるので、各相続人に現状を把握させ、納得してもらうには、それ相応の経験と確固たる知識が必要です。

 

司法書士と相続相談するメリット・デメリット

 

先述のように司法書士は、登記実務の専門家なので、煩雑な登記変更実務を正確かつスピーディーに行って貰えます。相続相談だけなら、初めの1回に限り相談料無料としている司法書士事務所が殆どです。

一般的に、弁護士に比べ、書類の作成料金や遺産分割協議が不調に終わった場合に行う裁判所への調停申請書作成料も安いとされています。

ただ、簡易裁判所の範囲を超えた高額の訴訟に発展した場合は、弁護士と異なり訴訟代理権を有しないので、最終的には弁護士に依頼し直さなければならない場合も生じます。

 

行政書士への相続相談

 

行政書士も、相続相談の看板を掲げる事務所が近年増加してきました。行政書士のキャッチフレーズは、「町の法律家」であり、様々な法律問題解決のための問題整理を行うには適した存在です。

行政書士は、本来、役所に提出する様々な申請書等の制作代行を行う事が主な業務です。そこで、相続相談を行政書士に依頼する場合は、特に相続について複雑でこじれた争いはないが、法律の規定に準拠して、書類を作成したり、一連の相続手続きに対処したい時であると言えます。

相続税の基本的な計算等も行えますが、相続税の具体的な計算や申告は税理士の専権事項なので、税務については一般論としての説明として聞いてください。行政書士もその点については理解しています。

 

具体的な行政書士との相続相談とは

 

行政書士も、法律の専門家に属する士業なので、相続問題の解決を扱う行政書士も、相続について様々な経験と法律上の知識を有しているものが多数存在します。

そこで、公平な遺産分割についてのアドバイスや法定相続人の相続分の確認、遺産分割書の作成も行政書士が得意とする文書の作成です。

また、遺産相続では、相続人を確定する必要があるので、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本等を収集しますが、行政書士で相続を扱う者は、この分野で大きな実務力があります。何故なら、現在他人の住民票や戸籍を入手することは、プライバシー問題から大きく規制されていますが、行政書士には職務上この権限が与えられているからです。(各都道府県の行政書士会管理のもと専用の請求書類あり)。

 

相続相談を行政書士に依頼するメリット・デメリット

 

行政書士は、通常、他の士業に比べ報酬額が低く抑えられています。

また、敷居が低くいつでもフランクに対応してくれる利点もあります。

デメリットは、相談者が訴訟を行う際の訴訟代理人になれないことです。相談者の代理人として、他の相続人と遺産分割交渉等もできないことです。

 

税理士への相続相談

 

相続問題で気になることの1つに、相続税の問題があります。税理士は税務の専門家なので、相続税についても節税や贈与等に関して有効なアドバイスを貰えるでしょう。

相続財産の課税価額の評価を行い、相続人に適した相続財産の処理方法のアドバイスも期待できます。また、相続前の節税対策として、贈与税の知識も相続相談で十分理解することが可能です。

 

税理士に相続相談するメリット・デメリット

相続問題に詳しい税理士は、相続税の節税問題に詳しい税理士とも言えます。節税可能な遺産分配の方法から、遺産が不動産であれば、その課税評価を減少させる法的知識も有しています。

また、相続税の具体的な相談から納税申告書の作成まで、相続で一番頭の痛い相続税問題を最初から最後まで完了して貰えます。

ただ、税理士と言っても、相続に精通した腕のよい税理士ばかりではありません。商店の青色申告が専門の税理士もいれば、会社の税務が専門の税理士もいます。

これはどの士業に相続相談を依頼する時も重要なことですが、その税理士の専門やこれまでの経験が具体的に何であるかを調査する必要があることを示しています。