不動産の相続税

14.不動産の相続税

 

相続財産の中には、現金や預金、株式等の有価証券、ゴルフ会員権、骨董書画、美術品等様々なものがありますが、このうち相続に関する財産の約7割が土地・建物等の不動産資産です。

不動産の相続税は、取得した土地・建物の評価価額に対して課せられ、国税庁は、財産評価基本通達で個々の財産価値評価基準を提示しています。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/01.htm 「国税庁;財産評価ホームページ」

しかし、不動産は、金融資産等と異なり、相続開始時にどれ位の価格で市場に評価されているのか正確に判断することが素人には分かりににくいものです。そこで、専門家のアドバイスが重要になりますが、相続人自身も、不動産評価の基礎的な知識の理解は、不動産相続を迅速かつ納得行くものとするために欠かせません。

また、2015年からの相続税基礎控除縮小に伴って、相続で不動産を取得した相続人の課税対象者の範囲が拡大するので、相続税対策は十分行う必要があります。

 

土地の評価

 

土地は「1物4価」と呼ばれる、複数の価格がつけられている資産です。「4価」とは、①実際の売買取引価格である「実勢価格」、②国土交通省が公示し、実勢価格の90%で評価する「公示価格」、③国税庁が発表し、実勢価格の70%~80%の評価価額になる「路線価」、更に、④地方公共団体が算出する、実勢価格の60%~70%に評価される、「「固定資産税評価額」です。

このうち、相続に関係する土地評価価額は、③の「路線価」または、④の「固定資産税評価額」を基礎にして算出します。

また、土地の評価には、原則として宅地や田畑、山林といった「地目」と呼ばれる土地区分ごとで評価し、更に評価方法は、①路線価方式と②倍率方式があります。

尚、土地の地目は、登記記録に記録されている地目ではなく、課税時期(相続の場合は被相続人が亡くなった日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の当該土地の現況によって判定されます。

①路線価方式は、「路線価」(国税庁が示す路線に面する土地の価格)が定められている地域で土地価額を算出します。「路線価」とは、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額を表しています。

「路線価」(1㎡あたり)×面積(○㎡)で計算すれば、おおよその相続に関する土地評価価額が算出出来ます。

ただ土地の形状は、様々なので、「路線価」をその土地ごとの形状に応じて「奥行き補正率」等の各種補正率で修正して現実に適合した1㎡あたりの価額を算出し、これに実際の「地積」(面積)」を乗じて、当該土地の評価価額を算出します。

http://www.rosenka.nta.go.jp/ (国税庁路線価・評価倍率表ホームページ)

  ②倍率方式は、「路線価」が示されていない地域の土地評価額を算出する際に用いる評価方です。「固定資産評価額」に一定の倍数を乗じて算出します。一定の倍数に関しては、国税庁が決定しますが、「固定資産税評価額」は、各市町村役場で確認して下さい。

尚、路線価も固定資産税評価額も、実勢価格よりかなり低い価格で評価されるので、相続財産を現金で所持するより、不動産に代えて所有する方が節税になると言われています。また、自分で使用する土地(自用地)より、第三者に貸している土地(貸宅地)の評価額は減少します。何故なら、貸宅地は、借地権が土地に設定されているので、自由に転売できないからです。自用地と比較すれば、市場価格は2割から3割程度評価減になるからです。

農地の評価

農地の評価は、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて算出しますが、市街地近郊の農地(田畑)に関しては、付近にある宅地と比べて価格評価を行います。農地には、区分が設けられていて、①純農地・中間農地の場合は、固定資産税評価額×倍率、②市街地周辺農地の場合は、(宅地の評価額-造成費用相当額)×0.8、③市街地農地地では、宅地の評価額-造成費用相当額の各式で算出します。

ただ、貸し農地地の場合は、農地の評価額×(1-耕作権割合等)の式で計算し、使用代金を受け取らない、「使用貸借」契約で貸し付けを行っている場合は、耕作権割合の控除はありません。

家屋の評価

家屋等の建物の課税評価額は、「固定資産税評価額」にある一定の倍率をかけて算出しますが、現在は、1.0倍して算出することが決定しているので、家屋等の評価額は、「固定資産評価額」と同じ価格になります。

また、貸家の評価は、時用家屋の評価額から当該家屋の借家権割合を控除した価格で、

近年の借家権割合は、30%に設定されているので、貸家の評価額は、自用地価格の70%で評価します。

マンションの評価と注意点

マンションの登記を見ると、各マンション所有者の持分が記載されています。マンションの評価は、マンションの敷地と建物全体の評価額の内、持ち分割合に従ってマンションの評価額を計算します。マンションを第三者に賃貸している場合は、貸家やアパート同様に、自用マンションと比較して二割から三割が評価減となります。

マンションの資産価値を維持するのは、それなりの費用が発生します。管理費や修繕積立金、大規模修繕に備えた積立金等の費用が発生するほか、固定資産税等の税金の負担もあります。また、築年数がかなり経過したマンションでは、痛みの程度がかなり進行している物件もあり、賃貸するにしてもかなりのリノベーション(リノベーションには、管理組合の承認が必要)を行う必要があります。

立地がよく人気エリアの物件であれば、賃貸物件として収益が期待できますが、これは全てに当てはまることではありません。また、不動産は売却するにしても自分が思うほどの金額で売却されないこともよくあることです。

そこで、マンションの相続税に関しては、マンション資産や相続税に関する専門的な知識と経験を持った専門家と相談しながら、相続税対策を考えるべきです。

マンションは多くの住民が一つの土地と建物に住んでいるので、法律的にも複雑で細かな規定があります。このような問題は、国家資格者であるマンション管理士するのも1つの方法です。

小規模宅地等における特例

この特例は、被相続人が居住していた建物の敷地を配偶者や同居の親族が相続で取得した場合は、ある一定面性を限度として相続税評価額を80%減額する制度です。

この面積は、現在240㎡ですが、2015年1月1日から330㎡に拡大されます。

本制度にはさらに細かな適用要件がありますが、これらの要件をクリアした場合は、例えば、土地評価額が2億円であっても、相続税の申告では、80%控除した4000万円の金額で計算することができます。

また、この制度には、特定事業用宅地に関わる評価減制度や貸付用宅地等に関する評価減制度もあり、前者の場合は、限度面積は400㎡、減額割合80%、また後者では、限度面積200㎡、減額割合50%になっています。

尚、相続税の申告と納税は、相続や遺贈によって財産を取得した場合、被相続人が死亡した日(相続開始を知った日)の翌日から10か月以内に行う必要がありますが、相続財産が、基礎控除額以内であれば、相続税の申告は必要ありません。

ただ、小規模宅地等の特例制度の適用を受けた場合は、相続税の課税対象額に達しなくても申告する必要があるので注意して下さい。

相続税還付手続き

不動産の評価額は、評価した者によって大きく変わることがあります。土地等の不動産を相続し、既に相続税を支払っている場合でも、当時の土地の評価が過大に評価されていれば、相続税を払い過ぎている可能性もあります。

相続税は税務署が支払い額を調査して行うのではなく自己申告であるため、例え納税額が過大でも税務署は教えてくれません。

そこで、このような場合に備えて、国税通則により、納税者には、相続開始から5年10か月以内であれば、「更生の請求」が認められ、税金の還付が認められる場合があります。

不動産相続の際は、不動産に強い専門家に依頼

不動産の相続税を考える際には、通常の税務相談以外の知識や経験が必要です。個人事業者や企業経営者の方は、顧問税理士等の税務の専門家との付き合いがあるので、不動産の相続税についても安心だと考えていませんか。

しかし、税務処理と一口に行ってもその分野は非常に広いので、会社や事業の税務処理の専門家が、必ずしも不動産等の相続家とは言えない場合も多いのです。

不動産は一般的に非常に高額な財産であり、相続税もその分高くなる可能性を秘めています。不動産の相続税に関しては、不動産の評価をどのように評価するかがとても重要で、これにはかなりの経験が必要なので、不動産の相続税についてアドバイスを受ける専門家の選定は、他の相続と比べてより一層の検討が必要なのです。