相続税対策

5.相続税対策

 

2015年から施行される相続税税制改正で、相続税の最高税率の引き上げや基礎控除額の4割減額等の増税が開始します。

これにより、相続税の納税義務者がかなり増加することが予想されます。相続対象資産は住居用の不動産位しかない方も、大都市近郊では、相続税がかる方の範囲もかなり広がると考えられます。

そこで、相続税対策を十分検討することの重要性が大きくなります。

 

相続税の改正

 

2015年から施行される税制改正の主要ポイントは、①相続税の最高税率の引き上げと②基礎控除額の4割引き下げです。

相続税の最高税率は、現行制度では相続財産が3億円を超える場合、50%ですが、

引き上げにより、相続財産が6億円を超える場合には、55%の税率が課せられることになります。

この税率アップは、相続財産2億円を超える相続人が対象なので、一般的にこの税率上昇のデメリット受ける方は少ないと思われますが、相続財産がかなりあると思わる方は、専門的な観点を持ち、具体的に相続した場合の相続税対策のシミュレーションを早速開始すべきです。

また、基礎控除額は、今回の相続税改正で、現行の5000万円+1000万円×法定相続人の数が、4割減の3000万円+600万円×法定相続人の数になります。

例えば、被相続人の相続人が、配偶者と2人子のであった場合の基礎控除額は、現行では、8000万円までですが、改正後は、4800万円になります。

相続財産が8000万円を超えることはかなり少なく、課税対象者も非常に少なかったのですが、相続財産が4800万円を超える相続人の方はかなり広がると思われます。

例えば、景気が上昇傾向にあり、東京オリンピックを控えた東京近郊や大都市近郊の人気のある住宅地等に不動産を所有する方は、相続税改正に際して十分な相続税対策を行う必要があります。

 

相続税対策に重要な専門家の選定

 

相続税の基礎控除額の減額を踏まえ、相続税対策は多くの方の関心事となっています。相続税対策は、相続対象の不動産評価を出来るだけ抑えることが最も重要な対策と言えますが、この対策には、十分な知識と経験を有する税理士等の実務専門家の活用が不可欠と言えます。

相続税やその他の税制も、奥行きが深く様々な要素が絡み合っています。例えば、国家の難関資格である税理士でも、その専門分野は「相続税」ではなく「法人税」かもしれません。意外に思われるかもしれませんが、相続税対策に十分な経験を持つ税理士な少ないのです。

何故なら、会社の納税や個人商店の納税では、確定申告や決算期に毎年税務処理を行いそれら会社や商店の顧問税理士は、その業務を毎年積み重ねるので、自然に業務に精通するのですが、相続税の場合は、そのような頻度で起こることはないからです。

そこで、真に相続税の知識が十分で、相続税対策の実務に精通する専門家を選定する必要があるのです。

 

相続税対策はどう進めるか

 

2015年から導入される相続税の増税に際し、相続税対策に重要性が一層増しています。

相続税対策は、個人によって多種多様なので、自分に適した相続対策を行う事が最も重要です。これを行うには、事前対策が必要で、これを怠っては、相続税対策そのものが不完全になって対策の趣旨を実現できません。無理をして節税すると、リスクが大きいのでこれも避けなければなりません。

相続対策は、まず、相続財産の現状がどのようになっているかを具体的に把握する現状把握から開始して、相続した場合の相続税の概算を掴む必要があります。

これには、相続法の規定や各種相続税の特例、更に民法上の規定を理解する必要があります。これらの判断材料を元に、自分に可能で最適な相続税対策の実行手順を確認します。出来る限り、相続税対策の具体的案を列挙して下さい。

相続税対策と相続税の節税対策は混合しがちですが、相続税対策は、単に相続制の節税を行う事の他、各相続人が合意のもとで遺産分割決議に速やかに応じ、いわゆる「争続」にならないようにする機能や相続税の納税資金対策を視野に入れた幅広い相続税対策も含まれます。

相続制対策が、各相続人の理解を受け入れ難い方向に進めば、「争続」問題が生じる危険が生じますし、被相続人が事業者や農業経営者等であった場合は、相続対策のミスで、被相続人の事業を承継するために必要な資産が相続により分割の憂き目に遭い、その後の事業に支障をきたす事態に落ちることもあります。

また、相続税の納税は、原則として、被相続人が亡くなり相続が開始したことを知った日の翌日から10か月以内に納税申告して一時(1回)でしかも現金で納付することが義務付けられています。

そこで、この納税を行うために土地等の相続財産を売却して現金化して納税する必要に迫られることも生じます。

更に、極端な例では、相続税の節税対策で、相続財産である土地に賃貸アパートやマンションを建設して、土地の評価額を下げようとしたあまり、納税のために現金化可能な土地が殆ど無くなってしまったと言う事例も報告されています。

 

相続税をどう支払うかも相続税対策

 

相続税の納税資金対策は、相続税対策の重要な1本の柱として、未然に十分検討しておく必要があります。

先述のように、相続税の納付は、相続開始を知った翌日から10か月以内で、しかも、納付方法は1回に現金で納付することが原則です。

相続財産には、現金や預貯金、有価証券、保険金等の積極財産の他、借入金等の消極財産も存在することが考えられるので、積極財産と消極財産を迅速に調査し、相続財産の課税評価額の概要を算出する必要があります。

この際、相続税納付の原則である「一時に現金」での納付が出来ない場合は、例外的に、延納や物納といった納税手段が税法上認められているので、それらの方法も検討する必要があります。

 

延納によっても相続税が払いきれない場合

 

相続税の延納(分割払い)の特例によっても相続税を払いきれない時は、その払いきれない分だけ、「物納」が許されます。

例えば、相続税の納付額が3億5千万円で、現金で8000万円納税し、延納で2億円(毎年1000万円ずつ20年間納税{但し、相続不動産の評価額が相続財産の中で75%以上占める場合})場合では、納税額の不足分である7000万円について物納が許されます。

ただ、土地による物納には厳格な要件があり、原則として物納する土地を物納の申告期限までに測量して、隣地との境界線を確定しなければなりません。

尚、境界線確定を行う際には、当該土地の隣地の土地の所有者の立会いが求められ非常に面倒な事態に発展することも考えられます。

土地の境界確定は非常に難解な民事訴訟法の問題も含んでいるので、相続が開始して慌てて測量するより、被相続人の生前に落ち着いて、隣人共々納得のいく境界線確定作業を終えているべきなのです。

このような先を見越した相続税対策の実施が、結果的に相続税の節税に有効に働き、また、相続人の相続手続きの負担を軽減することに大きく寄与するのです。

 

相続制対策の納税対策は相続財産の現金割合を増加させること

 

相続税対策は、大きく分けて相続税の節税対策と納税資金対策の2つに分類されます。

この内、相続税の節税対策は、多くのサイトや書籍雑誌等で取り上げられることが多く、相続税対策と言えば、相続税の節税と考える方も多いと言えます。

ただ、相続税対策には、相続税の納付資金対策も含まれます。相続税の納税資金対策は、節税対策とは異なり、相続財産における、現金またはすぐに現金化できる「流動資産」の割合を増加させることです。

相続財産が不動産等の現金化しずらい「固定資産」であっても、共同相続で共有名義にの相続地を交換や一方の共有者が他の持ち分の土地を購入すれば、土地を売却して現金化することにそれほど時間がかかりません。

また、相続後の相続手続きやの税資金の確保を予め想定し、相続財産である土地を被相続人の生前に名義統一しておくことや売却も考えられます。

ただ、このような手続きは、法律上の規定や特例措置等、「どんな制度と法律があり、どうすれば得でどうすれば損なのか」が素人にな理解できないこともあるので、相続税対策は、相続税に事案を数多く経験した税理士等の専門家と相談することがベストな選択と言えます。

 

二次相続まで考慮する

 

相続とは、被相続人の権利・義務、財産といった諸々の法的地位が相続人に承継することですが、この承継は、被相続人の一身全属権を覗いて被相続人の配偶者や子、孫へと引き継がれ、そのたびごとに相続税が課せられます。最初の相続を一次相続と言いますが、相続税対策は、相続人からの相続である二次相続まで視野に入れた相続を考えておく必要があります。

例えば、配偶者が亡くなった際に、被相続人の配偶者には非常に高額な相続税の配偶者控除が認められています。そこで、被相続人の遺産相続にこの配偶者控除を活用することは節税対策として様々な媒体で紹介されている方法です。

ただ、この相続税の節税を見込んだ方法には、落とし穴が存在します。

一次相続において被相続人の配偶者に被相続人の遺産を偏って大きく相続させた場合、

この配偶者が亡くなり、その子等への二次相続が開始した際に、相続税が大きく膨らむ可能性があります。

仮に被相続人の相続人が配偶者と子二人であり、遺産が1億円であった場合、一次相続である配偶者の相続税基礎控除を活用すれば、配偶者の相続税基礎控除額は、被相続人が残した遺産と1億6000万円の何れか多い方なので、相続税の税負担はありませんが、二次相続では、配偶者の遺産1億円を相続した場合は、大きな税負担が発生します。特に、相続税の基礎控除額が四割カットとなる2015年1月1日以降は、納税義務額が大きく増加するので注意が必要です。

(現行の相続税基礎控除は、5000万円+1000万円×相続人の数ですが、改正後は、3000万円+600万円×相続人の数となり、更に、相続税対象額も細分化され、最高税率も50%から55%に引き上げられます。)

相続税の配偶者控除は、相続税の免除と思われている方も多いのですが、その本質は、発生した相続税の先送りと理解すべきなのです。

また、配偶者が被相続人の遺産以外に多額の遺産を持っていた場合は、相続税の負担は、より重いものになるので、生前の相続対策も十分図っておくことを忘れてはなりません。

これに対処するには、相続に対する知識を深め、遺産相続や相続税対策に豊富な経験と実務的な知識を有する専門家と十分相談することが必要です。